2009年7月12日日曜日

サマーキャンプin幌加内

この週末は、札幌医大の「地域枠」で入学した12年生を中心とした地域医療に興味のある学生さんたちが、地域医療の現場を学ぶサマーキャンプで幌加内に来られました。

地域枠っていうのは、医師不足対策として国が医学部の増員を認めたもので地元出身者を対象に奨学金制度などと共に卒業後一定期間は医師としてその地方で働く義務があるっちゅう制度です。

もともと自治医大がそういうシステムで、それによって離島や僻地の医師が確保されている(いた)という歴史があります。

道内でも札幌医大と旭川医大で昨年度から始まっているようです。

実際、地域枠で入学した学生が地域に出て働けるようになるまでは、最短でも8年はかかります。そして彼らが地域で働けるようになるためには、それなりのトレーニング、研修が必要です。さらに働きだしてから彼らをバックアップし、義務年限後もきちんと医者として働ける道筋をつけてあげなくてはいけません。

たぶん、どこの県も今から模索していくんだと思います。自治医大の卒業生と自治体とのネットワークがしっかりしている県や、佐賀大病院の総合診療部のように(宣伝です笑)若い医師が様々な地域、規模の病院・診療所で働きながら成長できるようなシステムがあればいいのですが、なければ早くシステムを創らなければ間に合いません。

もちろん北海道にも、とても良い学生、研修医教育をされている施設はたくさんあるんですが、それらの施設が有機的につながらないともったいないと感じています。

で、今回のサマーキャンプでは、札幌医大の地域医療総合医学講座が企画され12年生が計19名参加し、土曜の昼から日曜の昼まで一泊二日でホロカナイで行なわれました。

昼に幌加内に到着した学生さんたちは、町内を散策、観察して幌加内の特徴的なものや風景をデジカメに撮り、それに後でコメントをつけて発表するフォトボイスというフィールドワークを行いました。

午後からは幌加内町立病院の院長と僕がそれぞれスライドを見てもらいながら、お話をさせてもらいました。院長は地域医療や僻地医療についての大枠的な話から、自分の幌加内にいたるまでの経歴、離島医療の経験、や幌加内での生活の話。僕も経歴(研修歴、職歴)や幌加内で行なっている予防医療などを具体的に紹介しました。

都会の大病院にいては絶対にできない、行政と連携することによって自分たちが理想とする予防医療や医療が展開できる楽しさや介護・福祉部門との連携によって自分たちにとっても勉強になることが多いんだ!ということを伝えたかったんですが、伝わったかなあ。

その後、町内の施設見学をしてもらいました。ケアハウスや福祉寮では実際にお部屋も見せていただきました。学生さん達はホロカナイの福祉施設の設備の良さと福祉と医療の連携に感動してくれました(これホント)。

そして学生さんたちには町内のルオント温泉で汗を流してもらい、

夜はホロカナイの住民を招いての交流会(あじよし食堂で焼肉)です。

住民代表として町長、議会の副議長(兼そばうたん会会長)、役場職員、保健師さんたち、看護師長、主婦たち(?)に参加してもらいました。学生さんたちにとっても住民と直接お話をして生の声が聞けたのは刺激になったようです。僕の奥さんも医者で子どももいるので、特に女子学生にとっては自分たちの近い将来の参考になったんじゃないかな。

日曜日は、1年前までホロカナイに勤務されていて今は京都大学大学院で疫学の勉強をしているF先生のお話から始まりました。地域で医療をしていても臨床研究は可能だし、地域での経験を経てこそ良い臨床研究にもつながるんだよ、というお話でした。

その後、前日のフォトボイスのまとめ。4グループごとにホロカナの1シーンを切り取った写真とコメントを発表します。みんな新鮮な視点で語ってくれていて、普段なにげなく見ている風景も切り取られてみると発見が多いことを教えてもらいました。

そのうちの一つには「みち」というタイトルがつけられた町内の一本道の道路の写真で、「道」とホロカナイという彼らにとって「未知」であるという意味が込められていました。

そして、それは学生さんたちがこれから進む「道のり」も示しているんじゃないかなあと思いました。一本道ではなく、ロングロングワインディングロードかも知れないけどね。でも道はどこかには通じるから、一歩一歩進めばいいんだぜ。なんつって。

最後には、もちろんホロカナイに来たからにはアレです。そうです、蕎麦打ち体験です。

町内の「そば打ち道場」で病院事務長はじめ地元の指導員の方達の熱い指導のもと、二人一組で蕎麦を打ってもらいました。打ち立ての蕎麦は、その場で茹でられみんなでいただきました。美味しかったです!今日の蕎麦粉は指導員で蕎麦農家のSさん特製の雪蔵蕎麦(文字通り雪の中で保存され熟成され甘みが増した蕎麦)だったのもありますが、学生さんたちの情熱が蕎麦にも伝わったのでしょう。

そして若者たちは札幌へ帰っていきました。

学生時代にしかできないことも一生懸命にして、そして医者になってからもそれぞれの場所で楽しく、頑張ってください!

来春で僕は佐賀に帰るけど、北海道には君たちがいるから安心です!

人気ブログランキングへ←長文を読んでいただいた方は、ついでにワンクリック!

2009年7月8日水曜日

ヒブワクチンが足りない

昨日、HBC(北海道放送局)のニュース番組内の特集「ヒブワクチンが足りない」で幌加内町のことも紹介されました。

7分間の特集でしたが、CGを使ったヒブ髄膜炎の説明、小児科医のコメント、ワクチンの重要性、現在のワクチンの供給体制の問題点、定期接種化への必要性などコンパクトにまとめられていて、とてもわかりやすかったと思いました。

なにより、実際に乳児期に細菌性髄膜炎にかかり重度の難聴、視力障害の後遺症が残ってしまった患者さんとそのお母さんの言葉には重みがあり、改めてワクチンの大切さを実感しました。

ヒブワクチンの定期接種化を切に願います!

特集では「幌加内町は全国初のヒブワクチン無料化」と紹介していただきました。

ホロカナイでは水痘(みずぼうそう)ワクチンとおたふくかぜワクチンも全額助成しているんですが、これは紹介されませんでした。「ヒブワクチン」の特集なので仕方ないのですが。このブログでささやかにアピールさせていただきます(笑)

ニュースと言えども民放である以上、放送内容を決めるうえで視聴率がものを言います。昨日の特集の視聴率が高ければ、今後も予防医療や地域医療の特集を組んでもらえるんじゃないかと淡い期待をよせています。ホロカナイでの視聴率はかなり高かったと思うんですが、果たして札幌での視聴率やいかに?


人気ブログランキングへ  ←やっぱしヒブワクチンで大事やね。と思った方はクリックを~

2009年7月6日月曜日

放送決定!

何回かお知らせしている、当院が取材を受けた「子どもを守れない・・・ヒブワクチンが足りない(仮)」の放映日時が決定しました。

明日

7月7日(火)
18時5分~18時45分
(北海道ニュースゾーン)
HBC 「総力報道! THE NEWS 北海道」の特集枠

です~

明日、大きなニュースが入ると延期の可能性はありますが・・・
そして、特集は7分間でホロカナイのシーンは一瞬らしいのですが・・・

北海道にお住まいの方は是非、ごらんください!

しつこいようですが、当院のヒブワクチン(全額助成)についてはこちらを~
http://www.town.horokanai.hokkaido.jp/hosp/gaiyoutop/shinryoutop/shinryou09.html

※本文とはカンケーありませんが、写真はキーさんがホロカナイで捕られた川えびのかき揚げです。
ビールと一緒に食べると最高でした!美味しかった~
人気ブログランキングへ ←川えび旨そー!と思った方はクリックを。

2009年7月3日金曜日

ヒブワクチンってなんだ?

昨日は札幌医科大学地域医療総合医学講座が主催しているプライマリケアレクチャーで講義をさせてもらいました。

このレクチャーシリーズは毎週木曜日の朝7時半から30分間、インターネット会議システムを利用して全国(主に道内)の参加医療機関の医師や医学生・研修医に講義が行われます。

いつもは講義を受ける側で、プライマリケアの「ツボ」的なお話が聞けてとても勉強になっています。以前にも書きましたが、都会の病院に勤務していなくても勉強できる時代なのであります。
http://web.sapmed.ac.jp/chiiki/tv_kaigi/tv_kaigi01.html
http://www.carenet.com/primary_lecture/

で、今回は当院に声をかけていただき僭越ながらレクチャーをさせていただきました。

タイトルは「Hibワクチンってなんだ?~幌加内町は全国初の全額助成!~」。

Hib(ヒブ)っていうのは「インフルエンザ菌b型」のことで、このHibに乳幼児が感染すると髄膜炎を起こすことがあります。日本での1996~98年の調査では5歳未満のこどもたち10万人あたり8.6~8.9人が、このHib髄膜炎にかかっています。年間患者数は約600人になる計算です。全国で600人と聞くと少ないと思うかもしれませんが、Hib髄膜炎は初期診断が難しく治療が遅れてしまうことがあることや、抗菌薬(抗生物質)が効きにくいHib(耐性菌)が増えていることもあって治療が難しく、なんと約5%が亡くなり、約25%のこどもたちに後遺症が残ってしまいます。なのでワクチン(予防接種)がとっても大切なわけです。

米国は1987年からヒブワクチンを定期接種化して、数年後にはHibの全身感染症がワクチン導入前の1/100にまで減少し、Hib髄膜炎は「過去の病気」とまで言われるようになっています。WHOも1997年にヒブワクチンの乳幼児への接種を推奨していて、現在では世界の100カ国以上でヒブワクチンが導入されています(90数カ国で定期接種)。

と、いうわけでヒブワクチンの効果は明らかで、日本でのその導入が熱望されていたんですが、ようやく昨年の12月から国内でも接種できるようになりました。

しかし、定期接種ではなく「任意接種」のため、予防接種するかどうかは各保護者の判断に任されてワクチン代も全額自己負担になっています。Hib髄膜炎のリスクが最も高いのが0歳~1歳以下なので、ヒブワクチンは生後2ヶ月~7ヶ月未満で接種を開始することがすすめられています。

生後2ヶ月~7ヶ月未満で接種を開始する場合は、最初に3回+1年後に1回の計4回ワクチンを接種します。
7ヶ月~12ヶ月未満で開始する場合は、最初に2回+1年後に1回の計3回。
1歳~5歳未満では1回のみとなっています。


ヒブワクチンは、医師が必要と認めた場合は他のワクチンと同時接種することができます。

2ヶ月~7ヶ月未満で開始しようとすると、他の定期接種とのスケジュールの兼ね合いもあるので、三種混合ワクチンとの同時接種がおすすめです。ホロカナイでも同時接種をおこなっています。

任意接種なので接種料は、各病院で設定できるんですが、おおむね1回8000円前後だと思います。と、いうことは4回接種する場合は合計で32000円前後もかかるわけです。こどもさんが多いとさらに家庭の負担が増えてしまいます。せっかくヒブワクチンが日本でもできるようになったので、これではなかなか広まりません。

なので、幌加内町では今年の4月からヒブワクチンの全額助成を開始しました!

町内のお母さんたちの関心も高く、希望者が増えています。

しかし、ここで問題が一つあります。それはヒブワクチンの供給が需要に追いついていないことです。ヒブワクチンは「任意」接種のため、メーカーにしてみれば需要を予測することが難しく、つまりメーカーの予想を超えて国民の関心が高く、需要が供給を上まってしまっています。

メーカーによると、だいだい100床以上くらいの大きな病院だと10名/月は供給可能で、開業医や有床診療所などでは3名/月になっています。ホロカナイ町立病院は規模が小さいため原則、月に3名しかヒブワクチンが接種できません。ホロカナイでの予約は月に3名を軽くオーバーしてしまっているので、リスクの高い、より若い赤ちゃんを優先させてもらっています。これはお母さんたちも理解していただいています。

1年後には300万本/年、2年後には400万本/年のヒブワクチンが供給できるそうです。2008年の日本の出生数が109万人なので、2ヶ月~7ヶ月未満で全ての赤ちゃんがワクチンを開始すると109万×4=436万本/年のワクチンが必要になるので、2年後にはだいたいカバーできる計算なんだと思います。

ホロカナイでは全額助成をすることができますが、ヒブワクチンの助成を行っている自治体は全国で19市区町村しかなく(6/30確認現在)、助成がない自治体に住んでいる方との予防医療の「格差」が生じている状態です。ヒブワクチンの効果は明らかであり、定期接種化が望まれます。

なお、今月から鹿児島県の伊佐市でも全額助成が始まっているようです(他の自治体は一部助成)。

ついでにお知らせすると、ホロカナイでは4月から水痘(みずぼうそう)とおたふくかぜワクチンも全額助成を開始しています!この3種のワクチンを全額助成しているのは、全国でもホロカナイだけだと思います。


人気ブログランキングへ ←ヒブワクチンって大事やん!と思った方はポチっと。

2009年7月1日水曜日

放送延期のお知らせ その2

6月25日にお知らせした
「子どもを守れない・・・ヒブワクチンた足りない!」(仮)というテーマでうけたHBCの取材の放映時間がまたまた変更になりました。
 
いまのところ

7月7日(火)18時5分~18時45分(北海道ニュースゾーン)

HBC 「総力報道! THE NEW 北海道」の中の特集枠

で放送される予定です。
解散だなんだで政局も揺れているので、放映日時も安定しないんだと思います(ところで今度の選挙は絶対にいきましょー)。

北海道にお住みの方は是非ごらんください!

当院でのヒブワクチン(全額助成)についてはこちらをどうぞ~
http://www.town.horokanai.hokkaido.jp/hosp/gaiyoutop/shinryoutop/s