2009年7月3日金曜日

ヒブワクチンってなんだ?

昨日は札幌医科大学地域医療総合医学講座が主催しているプライマリケアレクチャーで講義をさせてもらいました。

このレクチャーシリーズは毎週木曜日の朝7時半から30分間、インターネット会議システムを利用して全国(主に道内)の参加医療機関の医師や医学生・研修医に講義が行われます。

いつもは講義を受ける側で、プライマリケアの「ツボ」的なお話が聞けてとても勉強になっています。以前にも書きましたが、都会の病院に勤務していなくても勉強できる時代なのであります。
http://web.sapmed.ac.jp/chiiki/tv_kaigi/tv_kaigi01.html
http://www.carenet.com/primary_lecture/

で、今回は当院に声をかけていただき僭越ながらレクチャーをさせていただきました。

タイトルは「Hibワクチンってなんだ?~幌加内町は全国初の全額助成!~」。

Hib(ヒブ)っていうのは「インフルエンザ菌b型」のことで、このHibに乳幼児が感染すると髄膜炎を起こすことがあります。日本での1996~98年の調査では5歳未満のこどもたち10万人あたり8.6~8.9人が、このHib髄膜炎にかかっています。年間患者数は約600人になる計算です。全国で600人と聞くと少ないと思うかもしれませんが、Hib髄膜炎は初期診断が難しく治療が遅れてしまうことがあることや、抗菌薬(抗生物質)が効きにくいHib(耐性菌)が増えていることもあって治療が難しく、なんと約5%が亡くなり、約25%のこどもたちに後遺症が残ってしまいます。なのでワクチン(予防接種)がとっても大切なわけです。

米国は1987年からヒブワクチンを定期接種化して、数年後にはHibの全身感染症がワクチン導入前の1/100にまで減少し、Hib髄膜炎は「過去の病気」とまで言われるようになっています。WHOも1997年にヒブワクチンの乳幼児への接種を推奨していて、現在では世界の100カ国以上でヒブワクチンが導入されています(90数カ国で定期接種)。

と、いうわけでヒブワクチンの効果は明らかで、日本でのその導入が熱望されていたんですが、ようやく昨年の12月から国内でも接種できるようになりました。

しかし、定期接種ではなく「任意接種」のため、予防接種するかどうかは各保護者の判断に任されてワクチン代も全額自己負担になっています。Hib髄膜炎のリスクが最も高いのが0歳~1歳以下なので、ヒブワクチンは生後2ヶ月~7ヶ月未満で接種を開始することがすすめられています。

生後2ヶ月~7ヶ月未満で接種を開始する場合は、最初に3回+1年後に1回の計4回ワクチンを接種します。
7ヶ月~12ヶ月未満で開始する場合は、最初に2回+1年後に1回の計3回。
1歳~5歳未満では1回のみとなっています。


ヒブワクチンは、医師が必要と認めた場合は他のワクチンと同時接種することができます。

2ヶ月~7ヶ月未満で開始しようとすると、他の定期接種とのスケジュールの兼ね合いもあるので、三種混合ワクチンとの同時接種がおすすめです。ホロカナイでも同時接種をおこなっています。

任意接種なので接種料は、各病院で設定できるんですが、おおむね1回8000円前後だと思います。と、いうことは4回接種する場合は合計で32000円前後もかかるわけです。こどもさんが多いとさらに家庭の負担が増えてしまいます。せっかくヒブワクチンが日本でもできるようになったので、これではなかなか広まりません。

なので、幌加内町では今年の4月からヒブワクチンの全額助成を開始しました!

町内のお母さんたちの関心も高く、希望者が増えています。

しかし、ここで問題が一つあります。それはヒブワクチンの供給が需要に追いついていないことです。ヒブワクチンは「任意」接種のため、メーカーにしてみれば需要を予測することが難しく、つまりメーカーの予想を超えて国民の関心が高く、需要が供給を上まってしまっています。

メーカーによると、だいだい100床以上くらいの大きな病院だと10名/月は供給可能で、開業医や有床診療所などでは3名/月になっています。ホロカナイ町立病院は規模が小さいため原則、月に3名しかヒブワクチンが接種できません。ホロカナイでの予約は月に3名を軽くオーバーしてしまっているので、リスクの高い、より若い赤ちゃんを優先させてもらっています。これはお母さんたちも理解していただいています。

1年後には300万本/年、2年後には400万本/年のヒブワクチンが供給できるそうです。2008年の日本の出生数が109万人なので、2ヶ月~7ヶ月未満で全ての赤ちゃんがワクチンを開始すると109万×4=436万本/年のワクチンが必要になるので、2年後にはだいたいカバーできる計算なんだと思います。

ホロカナイでは全額助成をすることができますが、ヒブワクチンの助成を行っている自治体は全国で19市区町村しかなく(6/30確認現在)、助成がない自治体に住んでいる方との予防医療の「格差」が生じている状態です。ヒブワクチンの効果は明らかであり、定期接種化が望まれます。

なお、今月から鹿児島県の伊佐市でも全額助成が始まっているようです(他の自治体は一部助成)。

ついでにお知らせすると、ホロカナイでは4月から水痘(みずぼうそう)とおたふくかぜワクチンも全額助成を開始しています!この3種のワクチンを全額助成しているのは、全国でもホロカナイだけだと思います。


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